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川柳つれづれblog

*毎日の川柳作品の他、大好きなフィギュアスケートやミステリ、本、映画、その他日々の出来事をつれづれなるままに……。

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教師冥利

私が大学院でお世話になった教授が、この三月で大学を退官なさる。その最終講義が、大学で行われた。
教授は大学では有名な「鬼教授」だった。何しろ、一年生の必修の講義で受講生の90%を「不可」にして、教務部に「いくらなんでも厳しすぎる。もう少し何とかなりませんか」と泣きつかれたという伝説の持ち主なのだ。
とにかく教授の授業は厳しいことで有名だった。出席はもちろん、普段のノート、レポート提出、研究発表、論文、と追いまくる。しかも、たいてい二度と同じ授業はなさらないから、昨年の先輩のノートなんぞを手に入れてもテストの役には立たない。「大学は八年まで通えますからなあ」というのが教授のお得意のお言葉だ。
そしてまた教授は、真面目な学生には滅法おやさしい。お酒が大好きで、美しいものが大好きで、演歌が大好き。教授のゼミに入る第一条件は「お酒に強いこと」だというのも有名な話である。

不肖の弟子の私は、さんざん寄り道した挙げ句ろくに論文も書かず、結局学者への道をあきらめてしまった。それでも、まだ世に知られていない古典作品をみんなで読み解く楽しさや、苦労していろんな文献をひっくり返して新しい発見をしたときの喜びは忘れられない。ここで私は、学問の原点のようなものを教わった気がする。
だからこそ私は、凝りもせずに院を出た後も、教師をしていた時も辞めた後も、月一回の輪読会にできるだけ顔を出し続けたのだ。

この教授の最終講義の受付で、私は思いがけない人と出会った。
「えー、ウソ! 渡辺先生!?」
なんとまあ、私が数年前まで勤めていた高校の教え子だった。しかも一、二年の間はほとんど毎日、古典と漢文と放課後の補習で顔を合わせていた子なのだ。
聞けば、彼女は私の影響で、このゼミを取ることにしたのだと言う。
「先生、いっつも古典が好きで好きでしょーがないって感じで教えてくれたもんね」「先生に教わったおかげで、古典が好きになった」……いやあ、教師冥利に尽きる言葉ですなあ。

今、私は川柳教室をいくつか持たせてもらっている。その生徒さんたちは、ほとんど私よりも年上だ。
でも、どんな年齢層の方でも、何を教えるのであっても、基本は同じ。
私は川柳が大好きだ。川柳は楽しい。川柳は素晴らしい。だから、より多くの人にこの楽しさを分かってほしい。それは古典の時と同じだ。
いつか私が川柳を教えた人が、川柳を大好きになって、そうして素晴らしい川柳作家になったら。それはきっと講師冥利に尽きることですね。

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無題
この記事を読んで、私にも忘れられない先生がいたということ、懐かしく思い起こしました。高一のとき出会った漢文の先生、勉強嫌いの私がその先生のときだけは真剣に聞いていた。熱かった(そう感じた)んですよ、本当に好きだったから、教えたいと言う気持ち伝わったのだと・・・今は亡き先生だけど。

誰かの心に残るっていいですね。
今、教師になりたいって人少なくなったそうですね。

Commented on 2005/02/27 Sunday 11:04:56

by みい | コメント編集

無題
教授が最終講義の中で、「古典は柔らかくて、やさしくて、まろやかなものです。その良さを、一人でも多くの人に分かってもらいたいですね」とおっしゃいました。それを聞いて、ああ、先生も同じことを思ってらっしゃったんだ、この先生に習ってよかった、とつくづく思いました。
教える人間にとって、「誰かの心に残る」ことは一番の幸せです。好きなことを教えられる喜び。好きなことを伝えられる喜び。その「好きなこと」が生徒に伝わって、「好き」という気持ちが受け継がれてゆく、これほど嬉しいことはありません。

少し反省しているのは、だんだん忙しさに紛れて、それどころではなくなってしまったこと。態度の悪い生徒の生活指導に時間をとられ、受験受験で生徒を追いまくるうちに、教える喜びがどこかに行ってしまい、教えることに疲れてしまった。
もう教師には戻れないと思う一方で、もう一度あの頃のように「古典を楽しむ」心を伝えられたらなあ、と思ったりしています。

Commented on 2005/02/28 Monday 04:48:04

by 美輪@brownycat | コメント編集

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プロフィール
HN:
美輪@brownycat
性別:
女性
自己紹介:
1995年阪神淡路大震災に遭う。同年、時実新子に出合い川柳をはじめる。
「川柳大学」元会員、旧公式HP管理人。
ゆうゆう夢工房」会員。
雑誌「現代川柳」編集長。
KCC(神戸新聞文化センター)川柳教室講師、朝日カルチャー芦屋教室川柳講師。
2006年8月より神戸新聞川柳壇選者。
2007年秋よりコープこうべ通信講座川柳教室講師。
2009年4月より甲南カルチャーセンター川柳教室講師。

*神戸新聞2008/1/1~7掲載「源氏物語千年紀 川柳作家とゆく須磨・明石」はこちら

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