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川柳つれづれblog

*毎日の川柳作品の他、大好きなフィギュアスケートやミステリ、本、映画、その他日々の出来事をつれづれなるままに……。

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新子先生のこと

昨日(3月10日)、新子先生が遠くへ旅立っていかれた。
私が最後にお会いしたのはその2日前。病院でご家族に囲まれて、最後の時を待っておられた。

最後に近いときにお目にかかれたことを、喜ばなくてはいけない。病室で泣いてはいけない。そう言われて必死で涙をこらえた。泣き声にならないように気をつけて、先生に話しかけた。
新子先生、美輪です。先生にお会いできて良かったです、と。いっぱいいっぱい、ありがとうございました、と。
先生は手を握り返してくださった。それで充分だった。

1995年1月17日、阪神淡路大震災に遭い、私は3月末まで実家に避難した。
父母と共に暮らす穏やかな日々の中、それでも神戸に戻りたいと思った。
しかし無理に神戸に戻っても、住む場所はあっても仕事もない。あてもない。希望の見えない毎日の中、書店で手にした『わが阪神淡路大震災ー悲苦を超えてー』。
この本が私を川柳に、時実新子に結びつけた。

新子先生に初めてお会いしたのは、その年の9月。神戸市西区の先生のマンションで小さな句会が開かれ、その仲間の前で先生は「川柳大学」を立ち上げると発表した。
私はそこに居合わせたおかげで、「川柳大学」の創刊に事務局・編集委員として関わることができた。それから5年半、神戸事務局で毎月新子先生にお目にかかった。
最初は川柳よりも、編集作業がおもしろかった。原稿依頼、届いた原稿の整理、出稿、校正、そして発送。一冊の雑誌ができるまでのあれこれに関わることは、とても興味深かった。そして毎月川柳を見、作っているうちに、川柳そのものが私の中で大きなものに変わっていった。
いつの間にか、私は編集よりも川柳を書く方が好きになった。そうして、時実新子という存在が、前にも増して大きな存在になっていた。私は新子先生のカルチャーに通い、添削を受け、講評を聞き、毎月のノートは先生の言葉で真っ黒になっていった。

新子先生は私を可愛がってくださった。
新子先生と私は、どこか似ていた。同時に全く同じ替え歌を思いついたり、フィギュアスケートが好きだったり。生まれも世代も生活環境も全く違うのに、同じことで笑ったり、泣いたり、怒ったりした。
先生は私の文章を気に入っておられた。座談会やインタビューの文章は、新子先生の文章が一番おもしろい。しかしそれを先生は、私に代わりに記録させてくださった。「川柳大学」で一番人気だった「新子の川柳ライブ塾」は、カルチャーでの先生の言葉をそのまま書き写したもの。この文章についても、新子先生は私を非常に信頼してくださり、ほとんど任せてくださった。
私は新子先生のそばで、いろいろなことを学び、吸収していった。
そうして事務局が東京に変わっても、先生がカルチャーを辞められても、私は新子先生を追いかけてきた。自分がカルチャーで教えるようになっても、選者になっても、常に「新子先生だったらこうするだろう」と思って、新子先生にいただいたものを伝えることばかり考えてきた。
私にとって新子先生は、川柳そのものだった。

今、新子先生がこの世を去り。大きな大きな存在を失い。
私は途方に暮れている。母をなくした子供のように、立ち尽くしている。大きな大きな喪失感。胸にポッカリと空いた穴。
私は泣きながら、それでも歩き続ける。新子先生にいただいた川柳への愛を、世の中に発信し続けるために。

 三月のさみしい朝を歩き出す 美輪

拍手[2回]

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Re:新子先生のこと
今日新聞で見てはじめて訃報を知りました。
新子先生の書かれたものが好きで,見よう見まねでブログも立ち上げました。

さみしいですね。
軽快な先生の文章がもう読めなくなるなんて。。

Commented on 2007/03/11 Sunday 11:01:49

by しのぶ | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>しのぶさん

いらっしゃいませ、ようこそ。
本当にさみしいです。先生の文章、先生の川柳。先生の新作にもうお会いできないと思うと……。
でも先生はいつも私のそばにいる。きっといつも私たちを空から見守っていてくださると信じています。

Responsed on 2007/03/11 Sunday 11:20:57

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
私も今朝の新聞で知りました。美輪さんのことが頭に浮かびました。
胸中お察しします・・・。
「悲しみも淋しさもすべて愛」みい
心よりご冥福をお祈りします。

Commented on 2007/03/11 Sunday 11:48:36

by みい | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>みいさん

ありがとうございます。
新子先生のことを考えると、しばらくは涙が止まらないと思います。
それでも私は、新子先生にいただいたものを大切に、これからも川柳を発信していきたい。先生はいつでも空から見守っていてくださる。そう信じています。

Responsed on 2007/03/11 Sunday 11:58:50

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
先生が旅立たれたこと、今朝の地元紙で知りました。
心よりお悔やみ申し上げます。

美輪さんのブログと出逢わなければ読み過ごしてしまうどころか目を留めることさえないであろう記事でした。

慰めの言葉もありませんが、川柳という素晴らしい世界に出逢えたことを糧に美輪さんご自身の道を邁進することがご供養かと思います。

ご冥福をお祈りします。

Commented on 2007/03/11 Sunday 17:33:11

by えっくす | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>えっくすさん

なんだかまだ実感が湧いてきません。いつまでも醒めない悪い夢の中にいるようです。

>慰めの言葉もありませんが、川柳という素晴らしい世界に出逢えたことを糧に美輪さんご自身の道を邁進することがご供養かと思います。

ありがとうございます。
私もこれから、川柳を愛し伝えることに一生を捧げた新子先生のために、少しでも川柳の魅力を伝えていければと思います。
新子先生のいないさみしさを噛みしめて、歯を食いしばって歩き続けます。

Responsed on 2007/03/11 Sunday 17:40:03

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
美輪さん

>でも先生はいつも私のそばにいる。きっといつも私たちを空から見守っていてくださると信じています。

その通りだと思います。
かなしみを無理に抑える必要はないと思います。
ただ、体調を崩さないように、ちゃんと食べて、ちゃんと眠って下さい。
楽しむ時は思い切り楽しんで下さい。
きっと、新子先生も一緒に楽しんでくださるんじゃないかと思います。

ご冥福をお祈り申し上げます。

Commented on 2007/03/11 Sunday 21:26:43

by のし | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>のしさん

ありがとうございます。
泣いてばかりいて川柳を作らずにいたら、新子先生に叱られますよね。
新子先生もフィギュアスケートを見るのがお好きでした。いつもお洒落でハイカラで、綺麗なものが大好きだった新子先生。東京ワールドは、空の上の新子先生と一緒に見ます。先生もジュベールや大ちゃんを応援してくださるかな……。

Responsed on 2007/03/11 Sunday 21:37:22

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
心よりお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈りいたします。

テレビのニュースで訃報を知った時、まず美輪さんが思い浮かびました。
今まで川柳に縁がなかったので、このブログに出会わなかったら聞き流していたことでしょう。

先生もフィギュアスケートがお好きだったのですか。
きっと、美輪さんが悲しみをこらえて世界選手権を楽しむことを、先生も望まれると思いますよ。

このブログを愛するみんなで、先生のご冥福をお祈りしつつスケートを楽しみましょう。

Commented on 2007/03/11 Sunday 22:36:54

by mikei | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>mikeiさん

ありがとうございます。
新子先生は、私のような熱狂的なスケートファンではありませんでしたが、美しいもの、ひたむきなものが大好きで、スポーツのTV観戦がお好きでした。フィギュアスケートもよく御覧になって「きれいねえ」とおっしゃっていました。
東京ワールド、先生と一緒に楽しみたいと思います。

Responsed on 2007/03/12 Monday 04:36:08

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
突然の訃報、お悔やみ申し上げます。
時実先生のお加減が、そんなに悪かったとは知りませんでした。

先生のことは、深くは存じ上げませんでしたが、川柳が、ユーモアにあふれた軽いもの…たとえば旦那衆の遊びみたいな…というイメージが私の中にあった頃、ある日目にした時実先生の川柳は、生と性が濃密に感じられ、衝撃を受けたことをいまでも覚えています。川柳があれほど、人の心を動揺させるものだとは。そして、あれほど自分の内面までさらけ出してしまうなんて、強い人だなあと。
それまでの川柳のイメージを一新してしまいましたね。

寂しくなりますね。失ったさみしさは、何かでふさぐことはできないんですよね。
しかし、美輪さんは先生からあまりあるほど、たくさんのものを、形はないかもしれないけれど、もらったのだろうと思います。
今度はそれを伝える番なんですよ。大変なことだけど、人生かけてのやりがいのあるテーマですね。きっといつも先生が見守ってくれています。

Commented on 2007/03/12 Monday 00:16:37

by ニルギリ | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>ニルギリさん

新子先生は、川柳を文芸の域まで高めた方、それを一般の人々に強く印象付けた方。先生を亡くしたことは、川柳仲間の誰にとっても大きな悲しみです。
でも、おっしゃるとおり私は、先生からたくさんのものをいただきました。それを今度は、次の世代、次の世に伝えていくのが私たち残された者の使命だと思います。
新子先生の心を、魂を、命を注いだ川柳を、語り継ぐのが私の使命です。

Responsed on 2007/03/12 Monday 04:40:23

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
心よりお悔やみ申し上げます。
あわてて新聞広げました。
こちらの地元新聞にも縁りのあった方のようで、写真も掲載されていました。
どのような言葉をおくればいいのかわからず、コメントが遅れました。
申し訳ありません。
皆さんがおっしゃるように、先生は、きっとどこかで見守っていてくださるでしょう。
いただいたたくさんのものを伝える使命、大変でしょうけど、がんばって果たしてください。
遠くからですが、応援しています。

ご冥福をお祈りいたします。

Commented on 2007/03/12 Monday 23:02:42

by ザルツ | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>ザルツさん

ありがとうございます。
日中は、仕事中は何とか普通に過ごせるんですけどね。仕事が終わっての帰り道とか、部屋で一人でいると、どうしてもダメですね。まだ苦しくてたまりません。今週末の講演も、来週月火の講座も、泣いてしまうでしょうね、きっと……。
新子先生に笑われるかな、こんな泣き虫では……でも先生も泣き虫だったもんなあ……なんてね。

Responsed on 2007/03/13 Tuesday 04:28:57

by 美輪@brownycat@管理者

Re:新子先生のこと
父が六郎さんと若いころからの友人だったのが縁で、以前、中国にいっしょに行きました。そこで初めて新子さんとお会いしました。おふたりが再婚してまもないころです。

七色のスカーフをいただきました。新子さんの魂は、天女か巫女のように感じられました。新子さんの川柳は、あのときの笑顔と真実を見抜く眼と共に、いまも、私を励ましてくれています。

Commented on 2007/03/19 Monday 20:30:21

by じゅん | コメント編集

Re:Re:新子先生のこと
>じゅんさん

>父が六郎さんと若いころからの友人だったのが縁で、以前、中国にいっしょに行きました。そこで初めて新子さんとお会いしました。おふたりが再婚してまもないころです。

そうですか!そうすると、20年近く前のことですね。
心あたたまる新子先生のエピソード、ありがとうございました。こんなおちゃらけブログですが、どうぞこれからもお気軽にお越しくださいませ。

Responsed on 2007/03/19 Monday 20:44:22

by 美輪@brownycat@管理者

美輪さん
新子さんを偲ぶ会について、アップされたら拝見したいと思います。

Commented on 2007/03/20 Tuesday 08:21:10

by じゅん | コメント編集

Re:美輪さん
>じゅんさん

本日、日時と場所についてアップいたしました。
当日ご都合がよろしければ、ぜひお越しください。

なお、問合せ窓口は川柳大学一本にしておりますので、ご了承ください。

Responsed on 2007/03/20 Tuesday 17:14:34

by 美輪@brownycat@管理者

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プロフィール
HN:
美輪@brownycat
性別:
女性
自己紹介:
1995年阪神淡路大震災に遭う。同年、時実新子に出合い川柳をはじめる。
「川柳大学」元会員、旧公式HP管理人。
ゆうゆう夢工房」会員。
雑誌「現代川柳」編集長。
KCC(神戸新聞文化センター)川柳教室講師、朝日カルチャー芦屋教室川柳講師。
2006年8月より神戸新聞川柳壇選者。
2007年秋よりコープこうべ通信講座川柳教室講師。
2009年4月より甲南カルチャーセンター川柳教室講師。

*神戸新聞2008/1/1~7掲載「源氏物語千年紀 川柳作家とゆく須磨・明石」はこちら

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